タイトル:蘭は渇望に濡れる 著者:ふゆの仁子 イラスト:奈良千春 発行:リブレ出版 レーベル:B-BOY SLASH NOVELS 発売日:2008/4/18 価格:893円(税込) |
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〜ひとりごと〜
男娼×伯爵家・次男(イギリス人)
| 英国王室とも密接な繋がり持つ伯爵家の次男、ウィリアム・バークシャーは、家を継ぐわけでもない自身の立場に、進むべき方向を見失い、自堕落に過ごしていた。 そんなウィリアムを見かねた父親の命令で、外遊に出ることに。 そして最終地点、上海に到着して1週間、父親の思いを他所に、ウィリアムの生活態度が変わることはなかった。 この日も、上海クラブで知り合った人物に誘われ、フランス租界に位置するクラブで浴びるように飲んだウィリアムは、上海最大の娼館へと連れて行かれた。 強かに酔っていたウィリアムだが、無理やり嗅がされた甘い香りが阿片であることに気づき、適当なことを言って店を出て、逃げ出した。 しかし、道に迷ったウィリアムは、視線の先でまるで舞っているかのように、武術の型をする人物に目を奪われる。 だが、その人物に、美しいと強い感情を抱いた瞬間、強盗たちに襲われてしまう。 抵抗を試みるも、酒に酔い、また阿片にも侵された体はままならず、殴られると覚悟決めたウィリアムに、しかし痛みは襲ってこなかった。 何故なら、ウィリアムが見惚れた人物が助けてくれたからだ。 艶やかで鮮やかな動きで敵を倒していく彼にウィリアムは、心臓が大きく鼓動し、さらに腰が疼く。 そして、彼の視線に濃厚な艶を感じたウィリアムは、その場に蹲ってしまう。 さらに彼の手が肩に触れ、不思議な香りに鼻腔をくすぐられたウィリアムは、頭が一瞬真っ白になってしまい、彼を抱き寄せ、唇を奪う。 最初は、抵抗していた月花(ユエホア)も、いつしか自身に身を任せ、誰が通るともしれない路上で、ふたりは抱き合った。 しかし事後、我に返った月花に逃げられてしまう。 翌日、彼を探すため出会った場所に赴こうとしていたウィリアムだったのだが、英国大使の誘いを断れず、客を選ぶという娼館『青雲楼』(チンユンロウ)に連れて行かれてしまう。 月花のことを考え、大使の話に気もそぞろだったウィリアム。 だが、舞台で始まった舞、そしてその中心で踊る人物に驚愕する。 何故なら、その人物が月花だったからだ。 しかも、彼がこの娼館一の男娼だと聞かされ・・・ |
1920年の上海が舞台です。
自身の運命を諦め、受け入れている娼館一の売れっ子男娼の受と、名門の家柄の出ながら、次男だったために自身の進むべき道を見つけられず、放蕩し続けている攻のお話です。
攻視点から始まりますが、受視点と交互に進んでいきます。
男娼と伯爵家の次男と、設定は普通じゃないですが、ふたりとも一途な性格で、そういう面では王道というか、正統派カップルだと思います。
ウィリアムの家は、英国王室とも密接な繋がり持つ名門の伯爵家なんですね。
けど、次男で、家を継ぐこともないウィリアムは、ケンブリッジ大学を卒業までしておきながら、定職にもつかず、遊び歩いていたんです。
自身のするべきこと、進むべき道、そして自身の居場所が、わからなかったんですよね。
ある意味、自暴自棄になっていたのかもしれません。
そんなウィリアムを見かねた父・ウォリングフォード伯爵に、「少しは外の空気に触れて己の立場を知るべきだ」と、外遊を命じられたんです。
ヨーロッパから始まり、モロッコ、チュニジアなど各地を廻り、最後の目的地がここ上海でした。
でもね、父親の心配はいやというほどわかっているし、自身でも『二十五歳になって、さすがに自分自身思うところもあり、この機会に自分を見つめ返すつもりでいた。けれど、混沌とした東洋の世界にさらに迷っている気がする』って、生活態度を改めることもせず、連夜、パーティーに明け暮れていたんです。
この夜も、上海クラブで知り合った英国人建築家に誘われ、フランス租界のクラブで浴びるようにお酒を飲んでいたんです。
そして、酔っていたウィリアムは、誰に誘われたのかも、連れて行かれたのもわからない状態で、上海最大の娼館に連れて行かれたんです。
けど、そこで阿片を無理やり嗅がされてしまい、慌てて理由をつけて店を出、逃げたんです。
でもウィリアム、酔っ払っている上に阿片まで嗅がされているでしょう?
なので、道に迷ってしまったんですよ。
今いる場所に来た道程すら、ほとんど思い出せない状態でしたから。
それでも、かなりヤバイ場所にいるのはわかっていたので、さっさと道を訊いて帰ろうと思ってたんですよね。
そうして歩いている時、広場のような場所でまるで舞っているかのように、武術の型をしている人物に目が留まるんです。
ウィリアムは、『額に浮かぶ汗を光らせる横顔を目にした瞬間、強い感情が生まれる。美しい――そう思った』んです。
で、彼に見惚れていたウィリアムは、背後から聞こえてきた声に、静寂を破られました。
しかも、声をかけてきた人物たちは、親切ごかしに「道案内しますぜ」と言いながらも、目当ては強盗。
軽くいなしたウィリアムでしたが、ナイフを出してきた男たちに、持っていたステッキで応戦したんです。
「いつまでも、うだうだ迷っていた僕に、神が与えた試練か――」と、苦笑しながらも、決して笑っていられる状況ではなく、また、逃げる算段をしてみたところで、酔った体は思うようにならなかったんですよね。
その上、動いたことで、酒と阿片が今更ながら全身に回ってしまい、ふらついてしまっていましたから。
そして、隙を突かれ、彼らに捕まってしまったんですよ。
で、殴られるって、衝撃に耐えようとしたけれど、痛みは襲ってこなかったばかりか、捕らえられた体さえ自由になったんです。
え?って、思って目を開けてみたら、さっきまで武術の型をしていた青年が、助けれくれてたんです。
再び彼の舞でも踊っているかのような優美な動きに目を奪われていたウィリアムですが、同時に彼から香るほのかな甘い香りに、心臓を疼かせたんです。
でも、男たちを追っ払ってくれた彼に、礼と名を名乗り、彼の名前を訊こうとしたウィリアムの言葉は遮られ、「無用心すぎます」「こんなところを、ミスターのような紳士が一人で歩いていたら、襲ってくれと言っているようなものです」って、叱られてしまったんですよね(笑)
なのにウィリアム、『ぞくりとするほどの鋭い視線を向けられているにもかかわらず、ウィリアムはその視線に濃厚な艶を感じた』って、意識は他に飛んでるし、そのせいで心臓はまた強く鼓動し、眩暈を覚えて蹲ったんです。
うん、ウィリアム、Mの要素ありますよね〜(←オイオイ)
そんなことを知らない青年は、怪我でもしたのかと慌てましたよ。
で、心配して肩に手を置いたんです。
けれどそれは、ウィリアムにとっては逆効果で、彼の不思議な甘い香りに鼻腔を刺激されてしまい、『動悸が高まり、呼吸がさらに荒くなる。口の渇きは癒えるどころか強くなり、体中が熱く、指先が震えた』んです。
でも、そんなこと正直に言えないでしょう?
なので、蹲った理由を、阿片を吸わされたとせい言い、肩を貸してくれるというので、それに甘えたんですね。
けどそのせいで、彼の顔とまともにかち合ってしまい、更にウィリアムを危ない気持ちにさせたんです。
それを、阿片のせいだと言い聞かせ、片付けようとしても、ウィリアムの鼓動は高鳴るばかりで、体中熱くなっていったんです。
そして『まるで花が蜜を溢れさせ甘い芳香で虫を誘うが如く、溢れる香りに翻弄される』んですよね。
ウィリアム、一流階級の出身者らしく、パブリックスクールを出ているんですね。
なので、戯れの延長で同性と互いを高め合うということをしたことがあるんです。
けど、それは若さゆえの欲求を晴らすためのもので、決して恋愛感情からくるものではなかったんですよ。
それに、彼が今までしてきた関係ってのも、その瞬間だけ楽しめればいいっていうものだったんです。
相手は、いくらでも向こうから来てくれましたしね。
だから、どうしようもないほどこの美しい彼に魅せられている今の状況に、動揺するんです。
それでも、触れ合った肩に彼の温もりを感じたこと、そして、鼻を掠める香りに、一瞬、頭が真っ白になってしまいました。
そして、頭が真っ白になったウィリアムは、彼を抱きしめたんです。
「離してください」と言われても、「いやだ」と子どものように言い、指を1本ずつ絡め、掌をピッタリと合わせたんです。
もうね、それだけでウィリアム、背筋がぞくぞくするほどの熱が生まれるし、蔑むような口調と視線を受ければ、自分でも驚くほどの支配欲が生まれてきたんですよね。
そして、『この花を散らしたい』『澄ました仮面を外し、その内に潜む感情を見たい』と思うんです。
「ふざけるのもいい加減にしてください。あなたもさっきの男たちと、同じ目に遭いたいんですか?」と言われても、「離せというのなら、それこそ男たちを倒したみたいに、袖の中の武器を使えばいい」と、逆に挑発し、捕らえたままの腕を壁に押しつけ、首筋に口付けたんです。
口づけられた青年は、その僅かな刺激にも全身を振るわせたんですよね。
なので、ウィリアムは『淫らで硬い百合の蕾が開き花びらを綻ばせる美しさを秘めた』彼を『もっと、見たい』『乱したい』と思うんです。
で、誰が来るともわからない路上なのにも関わらず、本格的に彼に触れていったんです。
最初は抵抗していた彼も、次第にウィリアムに応えてきてくれ、激しい情事を繰り返したんですね。
けど事後、我に返った月花と名乗った彼に、ウィリアムは逃げられてしまったんです。
しかし、未だ酒と阿片の酔いから、醒めきれてなかったウィリアムには、彼を追う術はなく、また意識を失ってしまいました。
翌日ウィリアムは、何故か自身の部屋で目覚めたんですね。
確かに、路上で意識を失ったはずなのに、目覚めたのは自室でしょう?
それに、昨夜の出来事が、あまりにも非現実的だったことから、夢でも見ていたのではないかと思うんです。
けど、自身の体に残る倦怠感が、二日酔いのせいでも、阿片のせいでもないことはわかるし、何より、肩口に残る爪の痕が、そうではないことを証明してくれたんですよね。
なので、夢を現実にするため、そして記憶の欠片を拾うため、今夜もあの場所に行くつもりだったんですよ。
けれど、この上海で世話になっている英国総領事主催の食事会が催されると連絡が入り、立場上断ることのできなかったウィリアムは、出かけました。
そして、上海一の茶館『青蓮閣』(チンリェングー)の奥にある娼館『青雲楼』に連れてこられたんです。
この『青雲楼』は、政財界のお偉方であろうとも、肩書きだけでは足を踏み入れることすらできないという、客を選ぶ娼館なんです。
そこは、娼館という役割だけではなく、世界の運命を変えるいくつもの政治的な裏会合も行われてもいるというところなんですよね。
娼婦たちも、美貌だけではなく、頭もよくて、酒や会話にも酔わせ、閨房術にも長けていることから、『青雲楼』の女と寝たら、他の女は抱けなくなると言われるほどの娼館だったんです。
そんな娼館にいても、ウィリアムは気もそぞろで、月花のことばっか考えていたんですよね。
そんな時、銅鑼が鳴り、舞台で舞が始まったんです。
彼女たちの舞は、上海一と言われているらしいのですが、それにさえ興味を惹かれることはなかったんです。
けれど、最初に出てきた女性たちより、少し遅れて出てきて、中央で踊る人物の顔を見たウィリアムは、驚きました。
なんと、その人物は月花にそっくりだったんです!
で、一緒に来ていた人に問うんです。
そしたら、やはり月花だという答えが返ってきたんですよね。
けど、月花が『青雲楼』の男娼で、それもトップの男娼だと聞かされ、ウィリアムは驚愕させられることになりました。
娼館一の男娼に恋をしたウィリアムは?
月花が、客じゃないウィリアムと、路上にも関わらず体を重ねてしまったのは?
そして、月花の本当の仕事とは?
今回は、ウィリアム視点でのみ書かせていただきました。
なので、少し補足を。
実は、月花には、子どもの頃の記憶がないんです。
気がついた時は、寒空の下で死への恐怖に怯えていたんですよね。
そんな月花を拾ったのが、その頃はまだ15歳だった『青雲楼』の主です。
世界の運命を変えるいくつもの政治的な裏会合も行われてもいるという『青雲楼』ですが、ここの本当の目的は別にあります。
そして月花は、その目的のための歯車に過ぎないんです。
月花は、そんな自身の運命を受け入れ、男娼をすることにも抵抗はなかったんです。
でもね、普段なら揉め事があっても、日常茶飯事のことなので、知らん顔を決め込む自身が、ウィリアムを助け、また客でもない彼と体を重ねたことに、戸惑います。
更に、ウィリアムと体を重ねたことで、客を取ることに抵抗を感じていくようになりました。
〜ツボな脇キャラ〜
李 明敏(リー・ミンミン)
先述通り、月花を拾い、名前を与え、『青雲楼』一の男娼に育て上げた人です。
この人も、『青雲楼』の裏にある目的を遂げるための道具でしかないんです。
それでも、それを成し遂げようと、命をかけて戦っています。
普段は、冷徹な人なんですけど、熱い面も持っていて、たぶん月花を道具として見てはいますが、色んな意味で愛していたんだろうと思います。
そして、この作品は、この李や、かなり良い仕事をしていた帝国海軍中尉で駐在武官の渡邊眞澄(わたなべ ますみ)を主役にした続編(3部作)が出るそうですよ。
ウォリングフォード伯爵
ウィリアムのお父さんです。
最後の方にちょろっと出てくるだけなんですけど、渡邊同様、かなり良い仕事をしています(笑)
とっても、顔が広く、人柄も良いみたいで、本人は意識しているのかどうかわかりませんが、あっちこっちで恩を作ってくれていたんです。
そのお陰で、ウィリアムはかなり動き安くなってましたからね。
それに、かなり愉快な人でした(笑)
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