2007年12月20日

【権力の花】
 榎田尤利 ill:新田祐克


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タイトル:権力の花
著者:榎田尤利
イラスト:新田祐克
発行:大洋図書
レーベル:SHY NOVELS
発売日:2005/7/4
価格:903円(税込)

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〜ひとりごと〜
 思想検事×大学教授

 その美貌と優秀さから『思想部の宝石』と呼ばれるエリート検事・蔵持 楓(くらもち かえで)には、弱みになるからと隠している秘密があった。
 その秘密のひとつが、送られてくる脅迫とも取れるメールに書かれていた。
 そんな時、思想犯の疑いを掛けられ、任意で事情徴収をし、不起訴になったK大学教授・陣内幸也(ゆきなり)から、いきなり口説かれる。
 大前提に相手も男だということもあるが、教授というだけあり頭のキレのいい陣内のふざけた態度が気に入らず、考える余地もなく、断る楓だったのだが、唯一の友人で親友・蓮沼(はすぬま)を尋ねて行った際、陣内と最悪な形で再会してしまう。
 というのも、蓮沼もK大学で講師をしており、楓もこの大学の卒業生で、仕事の資料を借りにK大学の書庫入った楓は、閉じ込められてしまった、しかも、たまたま居合わせた陣内とふたりきりで。
 楓は、秘密にしている持病のこともあり、軽いパニックに陥り、倒れそうになる。
 そんな楓を見て、幸いにも陣内は閉所恐怖症と勘違いをしてくれたし、彼の計らいですぐに書庫から出ることもできたのだが、この時彼から、沢山の質問と濃厚なキスをされてしまうというハプニングのおまけまで付いてきたのだった。
 だが、ある事件に関わっているとされているグループが、陣内の生徒の中にいるとされ、彼も関わっているかもしれないことがわかった。
 自身の元に集められた情報に違和感を感じながらも、全ての証拠が陣内の関わりを告げているようで・・・



 発売当時、一度読んだのですが、父親の駒として使われているとこ以外は面白かったので、再度読んでみたくなり、少し前の作品ですが、掲載させていただくことにしました。

 思想検事についてですが、検事は検事でも彼らが相手にするのは、思想犯です。
 そして、この思想検事は、戦前には実際にいたようです。
 けれど、現在はなく、架空のものだそうです。

 一番最初に出てきた陣内(攻)の肩書きが、助教授になっていたのですが、それ以外はずっと教授と呼ばれているので、教授としました。


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 楓の秘密のひとつは、持病を持っていることで、インスリン依存型糖尿病(T型糖尿病)なんです。
 一般的に言われる糖尿病(U型糖尿病)ではなく、以前は小児糖尿病と言われていたものです。
 簡単に説明をしておきますね。
 インスリンというのは、血糖値を下げるホルモンのことで、正常な人は、膵臓(すいぞう)より必要に応じて分泌されているんですが、インスリン依存型糖尿病の人は、それを作り出す細胞が破壊されてしまっているため、血糖のコントロールが不可能になってしまうんだそうです。
 なので、日に数回、インスリン注射を打たねばならなくて、また、食事が疎かになったりして血糖値が下がりすぎると、低血糖を引き起こして意識が昏睡してしまうばかりか、命にまで関わってくるそうです。

 小児糖尿病というのを聞いたことがありましたが、U型糖尿病と混同していたので、この時初めて違うんだと知りましたよ。
 また、この本が発売された当時、インスリン依存型糖尿病の少女の母親が、宗教団体にすがってしまい、適切な治療を受けられなかった少女が亡くなったという事件があり、更に印象深くなりました。

 話が逸れてしまいましたが、楓はこんな大変な病気にも関わらず、恨みを買いやすい思想検事という職にあるため、これは弱みにもなり兼ねないと、誰にも病気のことは明かしてないんです。
 もし、監禁でもされ、インスリンも食事も与えてもらえなければ、命に関わりますからね。
 なので、安易に話せなかったんです。
 それに、最高検察庁のNO.2、次席検事の父親にも「黙っていろ」と言われたのもありました。

 世間的には、最高検察庁のNO.2、次席検事と言えば、立派な父親のように見えますが、あることが発覚してから、父親の楓に対する態度は180度変わりました。
 今では、仕事以外で口を聞くことせありません。
 でもね、楓は父親に認めて欲しかったんですよ。
 なので、父と同じ検事の道に進み、言われるまま駒であり続けたんです。
 たとえ、父に売られ、男娼のように扱われようとも・・・

 楓、けなげですよね。
 こうなるには、父親の出世欲だけではない事情はありましたが、いつも犠牲になるのは子供で、例え物語の中のお話だとわかっていても胸は痛みますよね〜。

 そんな日々の中、楓は、K大学法学部政治学科の教授・陣内幸也と出会います。
 思想を取り締まるということに異を唱えている陣内は、目を付けられていて、起訴するというよりも、警告を与えるという意味での事情徴収でした。
 そんな敵対する関係ですので、楓の尋問に非協力的です。
 けれど、楓は不遜な態度の上初っ端から楓のこと口説きまくってくる陣内に言いたいことは山ほどあったんですが、検事としての仕事を続けようとするんです。
 だってね、いきなり「うん。かなりいい」「評判通りの美貌だな。検事にしておくのはもったいない」「ほら、その目だ。おまえの内側を暴くぞと言わんばかりの、冷たい目。ぞくっとくるね」と、楓が口を開く(尋問)前から、ひとりで喋りまくり、「楓。いい名だ。雰囲気がある。メイプルシロップが採れそうだな」ですよ。
 たぶん、楓と対峙して、5分も経ってないと思います。
 それなのに、いきなりこの調子ですからね〜。
 びっくりしますよね(苦笑)

 でもね、楓も冷静です。
 「いいえ、採れませんよ」って、生真面目に返し、容疑者である陣内のこの態度が虚勢からきているものなのかどうなのかと、一挙手一投足を観察しています。
  けど「そうか?ひと皮剥けば、冷たいがとびきり甘いシロップが詰まっていそうだ」と返され、『減らず口は無視に限る』と早々に無視することに決めたようですが(苦笑)

 あっ、陣内ですが、教授といってもまだ若く32歳です。
 因みに楓は28歳です。

 そんなふざけた態度の陣内ですが、彼も自身がここに呼ばれた目的が『警告』だとわかっているので、真面目に取り調べを受ける気がなかったのかもしれません。
 でも、楓が本題に入った途端、ガラリと変わります。
 陣内は、法学部政治学科で教鞭を取っているので、今更、自身に掛けられた『危険思想の所有』や、それにまつわる法律のことを説明してもらわなくても、百も承知なんですよ。
 実際、「俺の方が(思想検事について)あんたより詳しい」「時間の無駄だ」と言ってますし、それでも、決まりだからと説明しようとする楓に「あんたのそっけない声は嫌いじゃない、さあ、語ってくれ、釈迦が説法を聞こうじゃないか」とも言ってます。
 そして、楓の説明が終わるや否や、まるで講義を受ける学生に対するかのように、朗々と持説を解き始めました。

 そこで止めとけば、頭のキレる男と楓の評価も上がったでしょうに、最後にはやっぱり楓と口説く言葉を入れるんですよね〜。
 陣内、本当にお茶目さんでした(苦笑)
 更にね、この尋問の終盤では、とうとう「あんたのセクシャリティは?」から始って、自身が「ゲイ」だとカミングアウトまでし、最後には「今度デートに誘いたいんだが、ここに電話すればいいのか?」ですもん。
 いい加減、楓も呆れてましたよ〜。
 でも、そんな言葉にもいちいちきちんと返事するところが、楓の性格を表してるんでしょうね。
 表面上は、眉ひとつ動かしてなくても、腸が煮えくり返ってる楓が楽しかったです(笑)
 また、陣内の返す言葉も小洒落てていいんですよね〜。

 この後、楓は、陣内と同じ大学に講師として勤めている親友・蓮沼慎吾(はすぬま)の元を訪れます。
 楓はね、蓮沼に感謝しているんですよ。
 蓮沼は、人見知りする楓の手を引っ張り、自身のグループに加えてくれたんですね。
 なので、中学高校とまともに友達もいなかった楓に、友人ができ、学生らしい時間を過ごすことができたんですよ。
 なので、大学を卒業した今でも付き合いがあり、とても信頼してるんです。

 で、「……ここに来て、おまえの顔を見るとホッとする」という楓は、愚痴じゃないんですけど、陣内のことも少し話します。
 それに、身内くらいしか知らない楓の病気のことも蓮沼は知っていて、体調を心配された時、楓はつい『変なメール』が来ることも話してしまいます。
 蓮沼には、具体的に話していませんが、その内容は『あなたを潰すのは簡単だ。低血糖にしてあげればいい。後生大事に持ち歩いているインスリンを奪って、どこかに幽閉しましょうか?』と、楓が最も恐れていることが書かれてあったんです。
 そればかりか『あなたがた親子は検事などではない。あなたがた欲しいのは正義ではない。地位と権力、それだけだ。そのためなら、何人だって無実の者を殺す。殺人者だ。』というものでした。
 自身の病気のことを知っているメールの送り主に、恐ろしいものを感じながらも、楓は具体策はとらないんですね。
 その結果、楓は事件に巻き込まれることになります。

 そして、それはすぐに起こりました。
 楓が蓮沼と別れ、大学内の書庫に資料を探しに行くんです。
 K大学の書庫は、都内でも屈しの充実した資料が保管されていて、在校生だけでなく、卒業生も利用できることになっているんです。
 なので、楓も利用しているんですが、その時事件は起きました。

 この書庫の施錠はコンピューター管理されてるんですけど、楓は閉じ込められてしまうんですよ。
 その上、携帯まで無くなっていて、外部との連絡も取れないんです。
 でも、閉じ込められたのは楓だけでなく、たまたま陣内もいたんですよ。
 陣内が携帯を持っていたお陰で、すぐに開錠され、脱出できましたが、昼食前の時間で、低血糖を起こしかけてた楓は、閉じ込められたとわかった瞬間、軽いパニックに陥りかけました。
 倒れそうになる楓を抱きとめ、落ち着かせてましたが、陣内がいなければ、大変なことになっていました。

 後々、この場に居合わせたことで、楓に疑いを持たれることになっていましたが、助かったのは事実。
 でも、この後がいけなかった(苦笑)
 倒れかけた楓を落ち着かせようと、書庫内にあった椅子に座らせるんですけど、陣内ったら、そんな弱気な一面を見せた楓に我慢できなかったんでしょうね。
 濃厚なキスを仕掛けちゃいました!!
 こんなキスをしたことのなかった楓は、陣内に引きずられてしまい、体に力が入らなくなって拒むこともできないほどになってました。
 キスを解いたすぐ後に、救助隊が来てしまうので、楓が抗議する間もなかったのですが、かなり悔しい思いをしてました(笑)

 でもね、このキスを仕掛けられる直前、楓は陣内から問われた『検察官として必要最低限は持っていないといけないもの』というのに対して『正義感』と答えて彼を満足させていますが、更に「俺はあんたの正義感に、期待していいか?」とも問われるんですね。
 この時は、陣内のこと問いをあまり深く捕らえていませんでしたが、後々、この『正義感』という言葉が楓を支える言葉となりました。

 と、いうのも楓の父やその背後にいる今でも絶大な力を持つ元政治家の思惑で、楓は自身の『正義感』を問われることになるんですよ。
 この時に、思い出したのが陣内の「俺はあんたの正義感に、期待していいか?」という言葉で、楓は、父親の駒として居続ける自身にも疑問を持つことになったんです。

 けれど、父から渡された資料、そして友人・蓮沼の言葉、それらを総合すると楓に届いた脅迫メールの犯人書庫に閉じ込めた犯人楓が携わったテロ未遂事件の背後に関わりがあるとされる人物全てに陣内が関わっているように見えてくるんです。
 なので、自身を口説いていたのも、陣内の作戦だったのかと疑ってしまうんですよ。
 元々、楓は『愛』を知らない、わからないという人生を送ってきたので、陣内の言葉を額面通り信用もしていなかったですしね。
 でもね、自身が危機の時助けを求めたのは、陣内だったんですよ。
 それが、どういう意味を持つのか楓にはわかっていませんでしたけどね。


 全ての事件に陣内は関わっているのか?
 楓は、父の呪縛から逃れられるのか?
 そして、真犯人は?



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 発売から2年経っていましたし、読むのは2回目ですが、面白かったです。
 ただ、楓がリンカンされてるシーンは、やっぱりキツかったですけど・・・(←その分星の数がマイナスされてます)

 楓、最後には陣内に対する気持ちは固まってきてはいますが、そこ止まりなので、続編でないかな〜と今更ながらに思ってます。
 楓に突っぱねられても、突っぱねられても、懲りずに口説いてる陣内のその口説き方が結構好きなんですよね。
 例えば、楓に携番教えても一向に掛かってこない時「俺の携帯が壊れたらしい」「どうしてか、あんたからの電話だけ鳴らない。おかしいだろう?他はちゃんと鳴るんだ。もう何度も電話してくれただろうに、出られなくてすまなかった。こうして謝りに来たから、許してくれ」ですよ。
 もちろん楓はかけてないので、呆れてましたが、粋ですよね〜。
 なので、この人たちのお話、また(続編)読みたいって改めて思いました。



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posted by 零 at 22:20| Comment(0) | TrackBack(1) | 榎田尤利 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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