2007年11月27日

【アンダルスの獅子】
 松岡なつき ill:亜樹良のりかず


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タイトル:アンダルスの獅子
著者:松岡なつき
イラスト:亜樹良のりかず
発行:心交社
レーベル:ショコラノベルス
発売日:2007/9/10
価格:893円(税込)

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〜ひとりごと〜
 奴隷×主人
 強制的主従関係

 アル・アンダルス王国とスペイン・カスティーリャ王国との間の緊張が高まり、また、背反者のせいで、戦いに敗れたばかりだったアル・アンダルス王国は、潜んでいる間諜を探し出すため、一計を講じる。
 それは、疑わしき人物の元に、新たな間諜を送り込むというものだった。
 そして、武人・サイードが、カスティーリャ語に長けた間諜に相応しい奴隷を探すことを担い、海賊に襲われ、拉致されたカスティーリャ王国の商人の息子・ラファエル・サンチェスを買い取ってきた。
 しかし、ラファエルは、まるで暴れ馬のように気性が荒い。
 そんな暴れ馬を御するのが得意だし、好きだというサイードは、そんなラファエルの反抗的な態度を楽しんでいた。
 だが、罰を受けるラファエルが涙を零し、それを慰めるかのような奴隷に苛立ちを覚えてしまったサイードは、側近たちの戸惑いも押し切り、自らの手で彼に淫らな罰を与えることに。
 しかし、それはサイードの心に変化をもたらすもので・・・


 15世紀頃の実在のお話を交えたものになっているようです(詳しくは → Wikipedia

 松岡先生、ご無沙汰しておりますって挨拶したくなるくらい、久しぶりです。
 なので、迷ってたのですが、亜樹良先生のイラストに心惹かれてましたので、とうとう買っちゃいました(苦笑)

 お話は、アル・アンダルス王国の歴史みたいなところから始るんですね。
 凄く壮大なお話だし、登場人物がいきなり沢山出てきて、理解するのが大変で家系図みたいなのまで、作っちゃいました(←さすがトリ頭)
 でも、実際はそんなのはあんまり関係なくて、ほぼサイードとラファエルのお話でした。
 ですので、始まりが始りだっただけに、かなり物足りなさを感じてしまいました。
 もっと、ラファエルの間諜としての働きや、カスティーリャの間諜との騙しあいみたいなのを織り込むか、或いは、そこまで話を大きくしなくても、サイードとラファエルのバトルは楽しかったので、そっちだけにしても良かったんじゃないかな〜と思いました。


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 アル・アンダルス王国はイスラム教の国、そして、カスティーリャ王国はキリスト教の国なんですね。
 で、背景にキリスト教徒による国土回復運動(レコンキスタ)というのがあるんですよ。
 簡単に言えば、イスラム教を排除して、キリスト教に改宗させようみたいなものです。
 いわゆる、宗教戦争みたいなものですね。
 なので、アル・アンダルス王国とカスティーリャ王国は、常に緊張状態にあったんですよ。
 ですが、アル・アンダルス王国の前王・ハッサンが、夜伽をさせたハーレムの女性に正妻である王妃が、自身の息の掛かったものたちに暴行を加えさせたんですよ。
 それは、ひとりの王の寵愛を奪いあうハーレムでは、日常的に行われていたことらしいんですね。
 けど、暴行を加えられた女性を見たハッサン王は、その女性を愛してしまい、また以前より、王妃の高慢さを快く思ってなかったので、彼女を伴い王宮の一角に移り棲んでしまったんです。
 そして、更にその女性を『正式な王妃』と発表してしまったんです。
 王妃は、彼女が王子をふたりも産んだことから、自身の子で、現王太子ムハンマドの命運と、自身の失墜を意味するものだと、王を相手に戦争を起こすんです。
 ですが、この内戦にカスティーリャ王国が参戦してきたことで、一気に旗色は悪くなるんです。
 また、間諜がいたことで、王太子ムハンマドはカスティーリャ王国の捕虜になってしまうんです。
 事実上、勝利を治めたことになるハッサン王は、国をひとつにまとめる『けじめ』としてムハンマドの弟に責任を取らせ、殺害するんです。
 それを知ったムハンマド王太子は、屈辱を飲んでカスティーリャ王国の家臣になることを承諾し、自由を手に入れるんです。
 ですが、それは父王・ハッサンに復讐するためで、それに成功したムハンマドは新たなアル・アンダルス王国の王になります。

 長々と説明が続きましたが、こういうようなお話が前提にあります。
 そして、いずれ訪れるであろうカスティーリャ王国との戦争に備え、まずムハンマド王が捕虜になることにもなった間諜を探し出すことになるんです。

 長老たちが、怪しいと目をつけたのが、先々代の王に反逆し、国外追放になった一族の妻を持ち、ムハンマド王がカスティーリャ王国の捕虜だった時、通訳を務めたバエーサを友人として招きたいと王が言った時に唯一賛成したハミッドという人物だったんです。
 彼には、奴隷の女性を差し出し、間諜として潜り込ませていたのですが、カスティーリャ王国との繋ぎ役をしているであろうバエーサに送る間諜に困ったんです。
 そして、彼を油断させるため、カスティーリャ語に長けた人物が良いだろうということになりはしたのですが、片言を話す者はいても長けている人物はいなかったんです。

 そこで、カスティーリャの商船を襲っている海賊ならば、そういう奴隷を持っているだろうということになり、またその海賊たちと少なからず関わりを持っているサイードにその役目が託されたんです。

 そのサイードですが、彼らウマイヤ朝の流れを汲むグラナダ王国の貴族は、その王家の色とされている白い衣装を着るのが常となっているのですが、彼は黒一色の衣装を着ているんです。
 それは、サイードの亡くなった母の家の色が黒で、その黒を着るように言った母の遺言のためなんです。
 けど、彼の今までに迎えた3人の妻が次々と亡くなっているということで『妻殺し』、そして、どんな危険な戦地に赴いても必ず生還することから、『魔物(マーリク)』と影で言われているんですね。
 ただでさえ、『妻殺し』『魔物』と呼ばれるほど、恐れられているサイードなので、皆が白を着る中で、ひとり黒い衣装を纏うサイードは異端なんです。
 でもでも、『妻殺し』と言われてますが、彼の妻たちが亡くなったのは、妊娠や出産でなんです、一応は。
 この背後には、色々とあるんですが、サイードが殺しているわけではありません、念のため。

 さてさて、カスティーリャ語に長けた奴隷を探しに出たサイードは、洋上で海賊たちと会うことができ、早速交渉に出るんです。
 そして、カスティーリャ語を話せる者を甲板に集めさせるんですね。
 そこで、海賊から、見た目は綺麗で、大人しそうなのに、気性が激しい暴れ馬みたいなのがいると聞くんです。
 サイードは、『あっさり乗りこなせる馬は面倒がないが、目覚ましい能力に欠ける。その点、気性の荒い馬は手懐けさえすれば、速さでも勇敢さでも他の追従を許さない。しかも、その従順さを見せるのが己れの前だけというのも悪くなかった。そういう誇り高い生き物を支配する歓びは何にも勝る』っていう人なので、面白いと思うんです。
 おいおい、人間と馬を同じ扱いかよと思ったんですが、時代が時代なので、貴族以外は同列に扱われてもしょうがないんですよね。

 で、連れて来られたラファエル・サンチェスですが、地中海を縄張りにしている商人の息子なんです。
 この時代、乳母がいるのが普通のことなのかわかりませんが、乳母がいて、また語学が堪能だと、後を継いだ時にいいからと勉強の機会を与えられてたんです。
 と、いうことは、そこそこ裕福な家庭に育ってるんですよね。
 なので、海賊たちから受けた扱いに、相当頭にきてるんです。
 しかも、自身を奴隷として買おうとしているサイードにすら、交換条件を持ちかけてますからね。
 肝も据わってます。
 ワクワクしましたよ。
 自身の命を握っている相手に、怯みもせず、強気な態度
 更に、それを躾けるのが楽しいと言ってるサイードの組み合わせですからね。
 堪りませんでした(苦笑)

 ラファエルが、サイードに持ちかけた条件ですが、自身の語学の師でもある神父と幼い弟・ドミニクも一緒に買って、彼らは故郷に返して欲しいというものでした。
 怯まず、交渉を持ちかける勇気は凄いな〜と思いましたけど、虫の良い話だよな〜とも思ったんですよ。
 それじゃあ、サイードが損じゃんって、けど、彼らに身代金を払うように書いた手紙を持たせラファエルの両親に身代金を払わせるとも言ってました。
 サイードもそんなラファエルを見て『この跳ね返りは、自分の無聊をたっぷり慰めてくれるだろう。次の戦場に向かうまでの暇つぶしとしては悪くない。生意気な異教徒の牙を折り、爪を引き抜き、その誇りを完膚無きまでに叩き潰し、子猫のように足元にじゃれつくまでにしてやったら、どんなに胸がすくことだろう。』って、面白がってるんです。
 いや〜、にんまりしちゃいましたよ。
 このふたりが、どんな風に楽しませてくれるのかって(←オイオイ)

 そして、ラファエルを買ったサイードは、手始めにこの国のハーレムに入る女性が受ける脱毛という辱めの罰を与えます
 めちゃめちゃ痛そうでした〜。
 だってね、溶かした蜜蝋に肌をいたわる精油を加え、冷めないうちに肌に塗り、蜜蝋が固まったら、剥がすんですよ。
 しかも、全身。
 当然、下半身の大事な部分もです。
 想像しただけでも痛そうですよね。
 ラファエルは、四肢を拘束され、これをされるんですが、当然、大人しくされるがままになるワケもなく、暴言吐きまくりでした(苦笑)
 一応、サイードにも「なんで、こんな目に会わせるんだ?あんたは俺を通訳として買ったんだろう?」って訴えるんです。
 けど、「思い違いをするな」「私が買ったのは通訳もできる奴隷だ。そして奴隷の身をどう扱おうと、それは主人である私の勝手。おまえには文句を言う権利はない」と一喝されてます。
 それでもラファエル負けてませんでしたけどね(苦笑)

 そうして、脱毛をされるラファエルなんですが、やはり痛みは相当なもののようで、涙を零したんです。
 それを、奴隷の女性が拭き、慰めるんですよ。
 そのふたりの姿にサイードは胸をざわめかせたばかりか、急激に面白みが薄れて、不快の念がこみ上げてきたんです。
 で、従者たちをさがらせ、高価な飲み物を与え、それに噎せれば心配し、口移しでまで飲ませるんです。
 くちづけられても、放心しているラファエルに、またコロコロと良く変わる正直で無防備な瞳にサイードはぞくぞくさせられるんです。
 そればかりか、サイードは、こんな目にも合わされてもまだ懲りないラファエルに「おまえみたいに強情な奴隷は、体を痛めつけたぐらいでは曲がりきった性根を矯正できぬことぐらい承知の上だ。もっと耐え難いこと、我慢できないと思うことをしやる」と、体に触れるんです(むぷぷ)
 びっくりしたラファエルが「それ以上何かしたら、貴様のためには……」指一本動かさないと精一杯の虚勢を張って言おうとするんですが、先回りをされたサイードに「その場合は、私も可愛い弟と修道士ともども貴様を殺すだけのことだ」と脅されてしまうんです。
 ラファエルは、弟に手を出さないというサイードの言葉を信じていたから驚くんですね。
 でも、そこがラファエルが甘いとこですよね。
 自身は、サイードの言うことに従わないのに、弟たちは救ってもらおうと思ってるんですから、けれど、サイードの方が1枚も2枚も上手ですからね。
 実際にはしなくても、弟たちを人質にラファエルに従順を求めます

 この後も決して、サイードの言葉に諾々と従わないラファエルのことを「罰せられるとしても、私は『これ』が欲しい、見ているうちに、どうしても欲しくなった。しかと理由は判らない。呪わしいキリスト教徒で、そのうえ男だ。私を心底憎んでいて、できれば殺したいと願っている。短剣を握らせたら、間違いなく襲いかかってくるだろう」「止めるべき理由ならいくらでも思いつく。だが、その反対は皆無だ。もしかしたら、それこそが理由なのかもそれない。普段の私なら決してしないようなことを、やってみたいという子供っぽい欲望だ」と自身の寝室にラファエルを連れていこうとするのを重臣に止められたとき、せつなく語っています。
 逆に、ラファエルは、自身のことをあくまでも従わせようとするサイードに、奴隷としてしか見られていないこと、体がサイードに馴染んでいくことに悩みます。

 いきなりですが、サイードの生い立ちは、複雑なんですよ。
 それこそ、ムハンマド王と同じような家庭環境だったんです。
 だからこそ、亡くなった母も、一族の色の白ではなく、実家の色の黒を纏うように遺言したんです。
 そういう経緯や、また自身の妻が続けて亡くなっていること、そしてその原因を黙認したこと、そういった様々なことから、サイードは死に場所を求めているんですよ。
 親友・ユースフにも「足を踏み入れた途端、浮き世の苦労や苦悩と縁が切れる。それが天国だと偉大なる預言者は申された。私もその教えを心の支えにして、日々を過ごしている。不公平が罷り通るこの世にあって、死は誰にでも等しく訪れるもの。疲れ果て、休息を求める魂に、慈悲深い神が下される恩寵だ。与えられるときが、いっそ待ち遠しいぐらいだよ。次こそ、散りどきを逸するまい。」って、言ってるんですよね。
 それに『(私を恐れないのは、私を憎むものだけ)(それこそ、私にかけられた本当の呪いのようだ。心から私を受け入れ、愛してくれる者など、どこにもいない)誰にも求められていないのだ。ならば、この世に存在し続ける意味があるのだろうか』と考えても詮無いことを考え続けているんです。
 せつなかったです。
 でも、そんなサイードが始めて欲しいと求めたものがラファエルだったんですね。
 ラファエルは、自身の命の危険も省みず、サイードに弟たちを助ける交渉をしてましたものね。
 そういう部分が、寂しいサイードの心の琴線に触れたんでしょうね。

 そこまで、ラファエルを求めるサイードですが、アル・アンダルス王国とカスティーリャ王国との戦争は避けられないものとわかっているので、ある決心をしています。
 そして、間諜を見つけ出すことに成功しますが、ふたりには更なる試練が待っていました


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 始めにも書かせていただいた通り、メインをどこに持ってくるか、もう少し絞った方が良かったように思います。
 話が大きくなりすぎて、どちらも中途半端なイメージを持ってしまいました。
 ですが、ラファエルとサイードのバトルは楽しかったです。
 視点がラファエルサイドとサイードサイドと変わるのですが、サイード視点の方が多かったんですよね。
 特に心情面では。
 なので、贅沢を言わせてもらえば、もうちょっとラファエルが悩んでくれると嬉しかったかな〜と思います。

 松岡先生があとがきに「松岡が考える『傲慢攻めってこんな人』を描いてみた」と仰っていて、それは『「ちょっと酷いことしちゃったかな」と思っても決して謝らない、後悔しない、退かない男。その上受の心はしっかりと読み取っていて、後で痒いところに手が届くフォローをしてくれる、そんな人だったらいいなあ』という人物だそうです。
 私もそんな攻大好物なので、松岡先生に1票です。
 で、サイードもそんな感じの人物でした。
 そんな傲慢攻に、強気受、私には垂涎ものの主人公たちでした。 



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